会計士経験は転職後活きるのか? 会計士の知見をベースに、M&Aコンサルタントとして活躍している会計士 梶博義さんに聞く後悔しないキャリア選択
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社 梶博義氏(公認会計士)
監査法人での経験をベースにキャリアチェンジをしながら、現職において「楽しくやりがいある仕事がやれている」とお話いただいた梶博義さんに、これまでのキャリアを振り返り、どのように考えてキャリア選択して、やりがいある仕事に出会えたのか伺いました。
会計士経験を活かしたキャリアチェンジ――監査法人でのご経験が8年、それ以外でのご経験も豊富におありですが、どのようなお考えで転職されてきたのかお聞かせください
昨今は、働き方改革が話題ですが、生きる時間の中で仕事に割く時間の割合は大きいですよね。どうせなら楽しくてやりがいのある仕事をしたいという思いに素直に行動してきました。
私にとって楽しくてやりがいのある仕事は
「中小企業の支援」、「お客様から感謝される」
この2つの要素のある仕事だと実感しています。
現職のM&Aキャピタルパートナーズでまさにやりがいを感じているのはこの2つです。
――「何のために仕事をしているのか?」仕事のスタンスが明確に決まっていて尊敬します。どのようにしてそのようなお考えに至ったのでしょうか?
中小企業のお役に立ちたいという考えは、家庭環境が大きかったと思います。
実は実家が中小企業を経営していて、青果の加工販売事業をやっていました。家族経営の小さな会社ですが、親の背中を見ながら、中小企業の役に立つ仕事がしたい、中小企業を元気にしていく仕事がしたいと考えていました。
会計士を目指したのも、中小企業・ベンチャー企業の役に立ちたいという思いからです。トーマツのトータルサービス部で中小・ベンチャー企業のお手伝いができたのはとてもいい経験になりました。
――なぜトーマツを退職されたのでしょうか?
「感謝される仕事がしたい!」という欲が強かったから(笑)
トーマツでは、監査業務と株式上場支援、M&Aにおけるデューデリジェンス業務に携わっていました。
私にとって監査の仕事は、お客様から感謝されにくい仕事だなという実感がありました。
監査法人での8年間の経験を経て私が出した方向性は、「中小企業のオーナー社長が真剣に考えている課題を、オーナー社長と直接対話しながら解決していく仕事が、より大きな感謝につながる」 ということでした。
もっともっと中小企業のお役に立ちたい、そしてお客様から感謝される仕事がしたいという想いから、中小企業の事業承継コンサルティングを主業務としている青山財産ネットワークスに転職しました。
――事業承継のコンサルティングはどのようなお仕事だったのでしょうか?また、監査法人から転職されてどうだったのか、率直なところをお聞かせください
事業承継は経営の承継と財産の承継の二つの側面があります。経営を次世代にスムーズに継承するためのコンサルティングと財産を相続・税金の側面から事前に課題抽出と解決を行うためのコンサルティングでした。
監査法人から転職して、仕事へのやりがいを感じることに時間はかかりませんでした。
誰のために仕事をするのかが明確で、お客様から感謝される仕事だと実感できました。
監査法人時代は企業の経理の方と仕事をするケースが多かったのですが、事業承継コンサルティングでは、お客様のほとんどが中小企業のオーナー社長でしたので、経営者と直接仕事をして直接感謝されるというやりがいは大きかったと感じています。
――現在のM&Aキャピタルパートナーズに転職された背景を教えてください
基本的な考え方は変わっていません。
『中小企業の支援、お客様から感謝される仕事をする』ここは今後も変わらないと思います。
仕事の性質と介在するポイントに違いがあると感じています。
きっかけはM&Aコンサルティングの方と、仕事で関わったことでした。
M&A、つまり第三者への承継は、株をどこの第三者に渡すかによって自分が心血注いで育てた会社やそこで働いてきてくれた従業員の運命にも大きな影響がある。
お客様である、中小企業のオーナーに対して、お客様個人では解決できない課題を解決する価値提供ができ、その価値提供に対して高い満足度をいただける仕事だと考えて転職しました。
――転職されていかがですか?
私はコンサルタントをサポートする専門家ではなく、一人のコンサルタントとしてM&A仲介業に従事しています。コンサルタントは、営業力が必要とされる仕事なので、とても大変な半面、とてもやりがいのある仕事です。
先程もお伝えしたとおり、第三者への承継の場合、会社と従業員の運命に大きな影響を与えますし、またオーナーにもプライドがある。そのため、オーナーも真剣かつ慎重に考えます。
そのオーナーの想いに、全力で応えたい!
とても大変で、とてもやりがいのある仕事でしょ?
今だからこそ感じるところですが、『感謝される度合い』は、『お客様の悩みに対する真剣度』と『その悩みにどれだけお客様の立場になって応えられたか』に関係するものだと感じています。
――今後、将来のキャリアについてはどうお考えですか?
現職において、事業承継に真剣に悩まれているオーナー様お一人おひとりと本気で向き合っていきたいと思っています。『中小企業の支援、お客様から感謝される仕事をする』という点でも非常にやりがいを感じています。
一緒に働く仲間も素晴らしく、また仕事を通じて、人間的成長をしていくにも非常に恵まれた環境だと実感しています。
これまでの経験で感じる転機と成長――意志をもってキャリアを選択する中で成長の機会も多そうですね!
そうですね、自ら選んだ道だからこそ、後悔しないように努力することは必要だと思います。監査法人卒業後のキャリアにおいては、人間的成長の機会を多くいただけていると感じます。
中小企業のオーナー様から「梶に任せよう」って「人」として信頼関係を築く必要があります。それは、知識をつければどうなるっていう話ではない。譲渡オーナーとの信頼関係を構築する観点で言えば、専門家としての知識量は余り関係なく、とにかくオーナーの立場に身置くことが重要だと感じています。
――これまでのご経験の中で、「転機」だったと感じられることや出会いはありますか?
「人」との出会いは重要だと思います。
ビジネスマンとしてのベースはトーマツで会計士として働いていた経験です。当時、とても尊敬できる上司が数名いました。とても部下思いの上司で、多くの成長の機会・チャンスをいただきました。
今でも凄いと思うし、ああいう上司になりたいと思える人達です。ビジネスマンとして目指すべき人がいるのは恵まれた環境だったなと感じます。
――会計士としてのご経験はやはり大きいですね!卒業後に会計士の知見が活きるところはありますか?
知識の点では、M&Aが進みデューデリジェンスの段階に入ったあと、特に役に立つと思います。
あとは感覚的な話になってしまいますが、信頼関係が大事なビジネスにおいて、社会的信用のある会計士資格を+αで持っていることは、個人の強みとして生かされていると感じます。ただ、「信用」と「信頼」は違うものだと思いますので、「信頼」関係が重要なM&A仲介業において、会計士資格は+αに過ぎません。
後輩の会計士の方々へのメッセージ――タラレバですが、監査法人で働いていたときにもっとこうしたらよかったなぁと今だから思えることありますか?
意識的に、クライアントとの人間関係をつくることを重要視すると思います。
上司からアポイント入れられるのではなくて、自分から何かと理由をつけてアポイントをとりにいきます(笑)
少しでも監査しやすい環境をつくれるように積極的に行動したいと思います。
今だったら、経営者ディスカッションに注力したいですね!何を課題として考えているのか、本当の悩みは何なのかを理解したい。
「営業」という点でも意識したいと思います。シニアマネージャー・パートナークラスになると仕事を取ってくる必要もあるだろうけど、私はスタッフとして働いている間は意識が足りなかった。いかに早く経験・知識を蓄積していくかという点ばかり意識していました。もちろん知識を吸収することは大事だけど、今思うとそれだけでは、クライアントに信用されないなと反省しています。
――今後のキャリアに少し悩んでいる後輩会計士の方々に一言メッセージをください
極端な伝え方になってしまいますが、「20代で悩んでいるのだったら絶対に飛び出したほうがいい!」
「会計士」はゴールではなく、スタートラインで、その後のキャリアはもっと流動性があってもいいと思います。
会計士の知見を活かせる環境は、監査法人以外にも沢山あるから、迷っているなら飛び出したほうが、道は開けると思います。
ビジネスの中で活躍する会計士が増えていくと会計士を目指したいと思う優秀な人も増えて、結果的に会計士業界の発展に繋がると思います。
若いほど選択肢が多く、年齢が上がると選択肢が狭まってくるのは会計士も例外ではないと思います。少なくとも、私は監査法人から転職して確実によかったと思っています。
「楽しくやりがいある仕事」を求めて転職した結果、中小企業のお役に立ち、お客様から感謝される仕事をしています。大変だけどモチベーション高く働けています。
――ありがとうございました。
Profile
東京理科大学工学部卒業
2003年公認会計士2次試験合格
大手物流会社
中小監査法人
有限責任監査法人トーマツ
株式会社青山財産ネットワークス
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社
出身地
静岡県
趣味
格闘技観戦
休日の過ごし方
休日は2人の子供達(男の子・女の子)と遊んでいます。完全に親ばかです。