果敢にチャレンジする若い会計士を増やしたい!
東京CPA会計学院 理事 国見健介氏(公認会計士)
現在、東京CPA会計学院(以下CPA)の理事・講師業を中心に、幅広いフィールドで活躍している公認会計士、国見健介氏にお話を伺いました。
予備校講師というキャリアを選んだきっかけや、 "果敢にチャレンジする若い会計士を増やしたい" というミッションを掲げ「試験に受かる為だけの予備校」ではなく、「OB・OGが誇りに思える予備校」の運営に向けて熱い想いを語って頂きました。
会計士として活躍している多くの卒業生に何を感じているのか?卒業生から相談されたときにどのようなアドバイスをしているのか?
予備校講師ならではの視点から若手会計士に向けてのアドバイスも伺いました。
予備校講師というキャリアを選んだ理由
―国見さんが会計士を目指された理由からお聞かせください。
私の実家が家業をやっており、私はその跡取り候補だったというのが背景にあります。ある日、母親に「将来後を継ぐんだから、会計士の資格ぐらい取っておきなさい」と言われ、その時、母親がたまたまパンフレットを持っていたCPAに入校し、勉強を始めました。
―では合格後、どのような経緯でCPAに入社されたのでしょうか?
合格後は、アルバイトとしてCPAで働いていました。
大学卒業までのつもりだったのですが、論文試験が終わるまでは教え子の面倒を見たかったので、夏の論文式本試験まではCPAで働き、その後は、昼間は監査法人で働きながら、平日の夜や土日にボランティアで校舎に行って、質問に答えたり、相談に乗ったりしていました。
昼は監査法人、夜と休日はCPAという状態を半年くらい続けていたのですが、『やっぱり教育をやりたい!!」という強い想いから、CPAで働くことを決意しました。
―そこまで「教育をやりたい」と思われた理由をお聞かせください
3つありました。
1つ目は、「20代の自分でも高いバリューが出せる」と当時の私は考えました。
20代前半でバリューを出せる業界というのはなかなかありませんでしたが、教育の分野であれば、それが可能なのではないかと思いました。
2つ目は、「教育は他人の人生に影響を与えるエンジンになる」と考えていました。
実際、難関国家資格の合否はその後の人生に大きなインパクトを与えられます。
3つ目は、「win-winビジネスである」ということです。
講師の「合格させたい」という気持ちと、受験生の「合格したい」という気持ちには、全くズレがなく、人生をかけて勉強している受験生を見ていると、私も全力で役に立ちたいという想いになります。
―ところで、会計士になるきっかけだったご家族は、国見さんが監査法人を辞めることにどのような反応だったのでしょうか?
猛反対されました(笑)
すぐに「家族会議」ですよ(笑)。
私も若かったからこその意思決定だったかもしれません。当時の自分でも想定外でした。
しかし、会計士資格を持っているからこそ、やりたいことをやろうと思えました。
『情熱を注げる!バリューが出せる!』その想いで、教育業界に飛び込み、今では両親ともに応援してくれています。
―実際、教育の仕事で魅力に感じている事、難しく感じている事を教えてください。
当初想定していた通り、『人生に影響を与えられる仕事』というところに大きなやりがいを感じています。
全ての仕事においても、部下・後輩を指導する中で教育に携わることは可能だと思いますが、予備校講師業は、自分が伝えたいメッセージを直接発信し、多くの方に影響を与える機会に最も恵まれている職業であると感じています。
一方で、今やっている事の本当の成果は20年後、30年後にならないとわからないところに難しさを感じています。
単に合格するだけでなく、本当の意味で幸せに生きているのかという、教育の真の成果を得られるまでには時間もかかるためもどかしさを感じます。
教育から会計士業界を変えていく!
―CPAで働く魅力を教えてください
大企業でないからこそ、自分のやりたい事が貫きやすいことが最大の魅力ですね。CPAだからこそ、教育を楽しいと思えた部分はあると思います。
組織の規模も重要だと思いますが、私は自分が正しいと思った方向にまっすぐ進みたい人間なので、それが可能な権限と責任を与えてくれたCPAは最高の環境でした。
しかし、組織規模が大きくならないと社会に与えられる影響も限られるので、
自分達が信念を貫けて、やりたいことに取り組める組織
を徐々に大きくしていくというのが私の理想です。
―今後チャレンジしていきたいと考えていらっしゃることはありますか?
直近の目標は、合格者数を増やすことです。
少なくとも300~400人の公認会計士試験合格者を輩出し、その合格者にプラスの影響を与えられる教育機関にすることを直近の目標としています。
5年で合格者数1番になるため、無意味な規模の拡大ではなく、必要な規模を拡大していきたいと思っています。
―まずは事業規模の拡大、ということですね。
とはいっても、単に合格者を増やすことだけを考えているわけではありません。
CPAのミッションは "果敢にチャレンジする若い会計士を増やす" ことです。
「受かればいいよ」という教育ではなく、「受かった後に活躍するんだよ」という教育をする予備校です。「試験に受かる為だけの予備校」ではなく、合格後の人生にもプラスの影響を与えることで、「OB・OGが誇りに思える予備校」にしたいと思っています。
合格者数を増やしていった後は、監査法人や会計士協会といった業界全体にもプラスの影響を与えていく活動をしたいと考えています。
CPAが若くて優秀な合格者、合格後もチャレンジして活躍する会計士を多数輩出できるようになれば、会計士協会や監査法人に対しても、「優秀な若者がよりチャレンジできる資格や組織であってください。そういうことが可能な制度を考えてくださいね!」と、業界全体にも色々影響力を出したいと考えています。
会計士キャリアの考え方とは?
―会計士が今後のキャリアを考える際のアドバイスを頂きたいと思います。
一番重要なのは、目の前にあることを本気でやってみることだと思います。
卒業生の若手の会計士から、「やりたいことが見つからない」という相談を受けることが多いのですが、「色んなことを経験しないと、やりたいことが見つからない」と誤解しているような気がします。
例えば、オリンピックに出ている選手は、何十種類ものスポーツを経験してから選んだのかといえば、多分そんなことないと思います。僕も、教育をやる決意を固めることができたのは、バイト時代の1年間を、本気でやったからだと思います。
なので、まず目の前にあることに本気で取り組んでみて、それが楽しいと感じたら続けることにして、「違うな」と思ったら、また違うものに本気で取り組んでみると良いと思います。
本気で取り組むからこそ、自分の適性やそのキャリアの楽しさが見えてくることが多々あるので、まずは目の前のことに本気で取り組んでほしいと思います。
―なるほど「とりあえずマネージャーまで」というなんとなくの目標よりは、まず目の前の事に本気で取り組むことが重要ですね。
様々な考え方があって良いと思いますが、個人的には、『エッジの効いた人材になりたい』と思うのであれば、周囲の人達と違う経験をして差別化を図ることが重要だと思います。
周囲の人達と同じ経験をするだけでは、無難な結果しか得られません。
とある教え子は、試験合格後、周囲の合格者達が大手監査法人に入社する中、彼はインドに留学し、さらに現地の会計事務所・コンサルティング事務所で3年間勤務し、 "アジアのビジネスを知っている若手の会計士" というエッジの効いた人材となりました。
彼は現在、アジアなどの海外展開を目指すベンチャー企業のCFOとして活躍しています。彼のキャリアはエッジが効きまくっていますよね(笑)。
「周囲ができない、やってないことにチャレンジする事にこそ価値がある」と思います。
他人に反対されるような事にチャレンジするからこそ大きな成果が得られると考えています。私も、「学校なんてそんな上手く展開できるわけがない」とか、「教育なんてしないでビジネスをしたら」など、散々言われましたし、今でも言われます(笑)
周りの人は、色々言ってきますが、誰も私の人生の責任は取ってくれない。自分の人生の責任は自分で取るので、だったら、自分が後悔しない道を進もうと思うようにしています。そのため、何かチャレンジしようと思ったとき、たとえ周囲に反対されたとしても、「みんなができないと思っている、だとしたらこれはチャンスだ」と捉えて、本気で取り組んでみて欲しいと思います。
―差別化は重要だと思いますが、「キャリア」において周囲と異なる道に進むのはやはり勇気がいりますよね。
抽象的な言い方かもしれませんが、「願望と行動を一致させる」ことが重要だと思います。両者がズレてしまっていると、「何か違うんじゃないか」という不満感・欠乏感を感じてしまいます。
例えば、大企業で働いているのに「もっと責任・権限が欲しい」と不満を感じる人や、ベンチャーで働いているのに「もっと安定が欲しい」と不満を感じる人は、願望と行動が一致していません。
また、大きな成果を出したい、人と差別化を図りたいのに、努力はヤダ、目の前のリスクは取りたくないというのも、願望と行動が一致していません。
どんなキャリアにもメリットとデメリットは両方あるので、覚悟を持って選択し、選択した道のメリットを最大限取りにいくべきです。このキャリアのメリットを最大限取りに行こうと覚悟を決めた上で、キャリア選択をすると良いのではないかと思います。そうすれば、何か壁にぶつかったとしても、きっと諦めずに乗り越えられるのではないでしょうか。
―新しいことにチャレンジしたいがどのキャリアを選択したらよいか迷っていらっしゃる会計士にアドバイスください。
そうですね、2つあります。
「正解のキャリアなんかない」、「選択したことを正解にする人としない人がいるだけ」という2点です。
公認会計士の最大の魅力は、選択肢が多いこと、そして「違った」と思ったら別の選択肢に再度チャレンジできる機会に恵まれていることにあります。
それにもかかわらず、選択肢を前に「どれが一番いい選択肢かな?」と悩んだまま、ずっと選択肢の前で止まっている方が多く、もったいないなぁと感じるときがあります。
まずは1つ決めてみて、違ったらまた戻って別の選択をすれば良いと思います。私もそういう生き方をしてきました。
―とはいえ多くの会計士の方は、「失敗したくない」という気持ちが強いのかなと感じておりますがいかがでしょうか?
「失敗をすればするほど、成功の確率が上がる」という価値観へシフトすることをお勧めします。
会計士に限らないのですが、多くの大人は、失敗を避けている方が多いように感じます。確かに失敗はその瞬間かっこ悪いかもしれません。
しかし、それを理由に失敗を避けると、チャレンジをしなくなり、結果として成長角度が下がってしまいます。そのため、可能性を広げるためには、失敗は悪いものではなく、成長の過程では必ず必要という、失敗に対するネガティブなイメージをなくすことが大切だと思います。
何回失敗しても、成功すればいいという価値観が広がるイメージです。
卒業生を見ていても、合格後の活躍ぶりは受験時の点数ではなく、合格後も、どれだけチャレンジしているかで成長速度は異なっているなぁと実感しています。
「会計士UP」さんのやられていることも私はいいと思います。
選択肢を見せてあげること、意思決定した後の先輩会計士の姿をみせてあげることで果敢にチャレンジする若手会計士が増えていくことを願っています。
一度の人生、是非、チャレンジし続けて、自分の可能性を広げてください!!
―予備校講師として多くの会計士人材を輩出され、そのキャリアも見守ってこられた国見さんならではのお話が伺えました。ありがとうございました。
Profile
国見健介(くにみけんすけ)
東京都出身
慶応義塾大学 経済学部 卒業
学校法人東京CPA会計学院理事