会計士の"想像力"を活かせば、どんなチャレンジだってできる!
株式会社かんざし 取締役CFO 田中將寛(たなかまさひろ)氏 公認会計士
【7月24日開催】若手会計士向け交流会参加予定!!
2016年設立のベンチャー企業、株式会社かんざしに2018年からジョインしCFOとしてIPOを牽引している田中將寛氏。大手監査法人からベンチャー企業のCFOに転職して実感したギャップや、活かせる会計士の強みについて話を伺うことができた。キャリア選択の考え方についても参考になるお話を伺えました。
起業、CFOを見据え会計士に
―会計士を目指したきっかけを教えてください
高校時代から切磋琢磨していた友人が法学部に入り弁護士を目指していたので、私は経済系トップの資格である会計士を目指そうと思ったのがきっかけですね、負けず嫌いなので(笑)
私が大学に入学してすぐにリーマンショックが起こり、そこから就職氷河期だと言われていたので、資格を持っていたほうが有利だろうと思ったのも会計士を目指した理由のひとつです。
―有限責任監査法人トーマツ(以下トーマツ)に入社した理由と当時描いていたキャリアを教えてください。
東京と大阪で就職活動したところ、最初に内定を頂いたのが東京のトーマツでした。最初に私を選んでくれたトーマツにご縁を感じて入社を決め、各部署の説明会や先輩から話を聞いて、『面白そうだな』と感じたトータルサービス部(以下TS)に入社を決めました。
入社当初から監査法人で勤め上げるというキャリアのイメージはなく、自分で起業するかベンチャー企業で働きたいと思っていました。TSでベンチャー企業を担当し、社員の皆さんが楽しそうに仕事をしている姿や、一丸となって上場を果たし更なる成長を遂げるまでの過程を見ながら更にその想いは強くなっていきました。
監査法人からベンチャー企業CFO 転職の背景とは?
―監査法人から転職を考え始めたきっかけを教えてください。
トーマツの入社当時から、30歳前後で次のステップに進もうと考えていました。
監査の奥深さはまだまだあると思いますが、一通りの業務を経験できたため、今後二次関数的に自己成長をしていくためには、転職して視点を変えるべきだと思いました。
そして、自分で"意思決定"をしたいという想いを持っていました。監査法人で働きながら、その想いは年々強くなり、ベンチャー企業のCFOとして、経営の意思決定に参画するため転職を決意しました。
―『株式会社かんざし』とはどのような出会いだったのでしょうか?
トーマツ時代にお世話になった先輩に転職の相談をしたときに、投資先でIPOを目指しているベンチャー企業のCFOポジションを紹介頂きました。それが株式会社かんざし(以下、かんざし)です。社長や専務、常務との面談でかんざしのビジネスモデルや経営陣の事業に対する想いを伺い、共感することも多く、とても興味を持ちました。
監査法人での経験から、労働集約型ではないビジネスに携わりたいと思っていましたので、かんざしが手掛けるSaaS型のビジネスは面白いなと思ました。また、会社としてのミッションも魅力的で、すぐに入社を決めました。
―かんざしのビジネスについて教えてください
宿泊業界におけるインターネットソリューションサービスの提供が現在のメインビジネスです。
皆さんも見られたことがあると思いますが、ホテル、旅館は集客のために複数の宿泊予約サイトに宿泊プランを掲載しています。その際、ホテルや旅館の魅力や季節に応じたプランを随時、各サイトに入力していくとなると大変な労力がかかります。場合によっては、サイトへの情報入力や運用を行う担当者を一人雇う必要が出てきます。
当社の「かんざしクラウド」では、「かんざしクラウド」1つにプランを入力するだけで各宿泊予約サイトに一括で反映させることができます。これにより、今までの5分の1、場合によっては10分の1程度の作業量で宿泊プランの入力と管理ができるようになります。
また、2018年にリリースした「くちこみクラウド」では、投稿された口コミの内容をAIにより分析し、施設運営に活かすうえで着目すべき内容が一目で分かるように強弱をつけるとともに、返信文案を自動生成・提案し、口コミに対して素早く返信・対応することが可能です。
ニッチな分野で展開しているサービスですが、同様の手間がかかっている業界はまだまだあり、新しいマーケットに対するサービス展開も期待できます。
その第一弾として、当社のシステムをご利用いただいているお客様の声を参考に、2019年1月に「かんざしWEDDING」をリリースすることができました。ウエディング業界でも、ブライダルフェアやウエディングプラン、写真等を複数サイトに掲載する手間がかかっており、宿泊業界と同様の課題を抱えています。
複数の業界に対して上手くサービスを展開できれば、安定成長とポートフォリオ構築によるマーケットリスクの低減が実現できるものと考えています。なので、これからもガンガン行きますよ(笑)
―転職の際にどのような軸で会社選びをして、最終的に"かんざし"に入社を決めたのでしょうか?
IPOを目指すベンチャー企業のCFOポジションという軸だけは考えていました。
かんざしに入社をした決め手は"ご縁"です(笑)
トーマツに入社することを決めた時もそうでしたが、人生はご縁だと思っているので、当時直感で『いいな!』と思ったかんざしに即決しました。もっといいところがないか吟味してみようという考えはありませんでした。
選んだ今の選択肢が、常にベストの選択肢だと思っています。他の選択をしていないのだから、今がベストである以外にないですよね(笑)
会計士がベンチャー企業で感じた「ギャップ」とは?
―入社後、取り組んだ課題はありますか?
売上アップと資金調達です。
資金調達に関しては、入社後最初の課題でした。IPOに向けて、過去に実施してきた資金調達のスキームを見直して、各金融機関と交渉を繰り返し、クリアにしていきました。売上アップについては「かんざしWEDDING」の立上げに携わりました。新規事業の開発・立ち上げには今後も積極的に関与し、企業価値の向上に寄与していきたいと考えています。
―入社してからギャップを感じたことは何かありましたか?
"目的"が違うことに、いい意味でのギャップを感じました。
監査法人の時は、上司や先輩、同僚との会話で「クライアントを良くしよう」という話はしていましたが、転職してからは、「自社を良くしよう」という話を社員同士の会話でしています。もちろん自社の先にはお客様がいてそこは変わらないのですが、1人が1社と文字通り100%向き合う姿勢は、監査法人と違うなと思いました。100%自社の為に頑張りたい!意思決定していきたい!という思いで転職した私にとってはとても良いギャップでした。
悪い意味でのギャップは感じませんでしたね。
もちろんやったことのない業務は沢山ありますが、すべてある程度はイメージのできる仕事でしたのでキャッチアップできたのだと思います。
会計監査をする時に、その数字はどういう流れやオペレーションを経てできあがっているかというのを想像します。内部統制の監査だと逆で、スタートがあって業務の流れがあって数字を想像します。そうすると企業の数字と業務のほぼ全てを「想像」することができます。この「想像力」は会計士が持つ共通かつ絶対的な強みだと思います。想像できていなければ右も左も分からず立ち尽くしてしまうかもしれませんが、想像さえできていれば、それで良いのか、合っているかの検証と修正のサイクルで、まさしく会計士の得意とする「仮説―検証アプローチ」で前に進むことができます。
後輩の若手会計士へのキャリアアドバイス
―長期的な視点で将来チャレンジしたいことはありますか?
やはり、自ら起業したいという想いは依然持っています。
具体的なサービス内容までは決まっていませんが、WEBサービスを作りたいですね。そのためには、プログラミングを習得しないといけないなと個人的に思っていますが、超えるべき壁が高く苦戦中です(笑)
個人的な感覚ですが、"何かを自分で作ること"について弱い会計士は多いと思います。プログラミングができる会計士が増えれば、理想と現実のギャップを自らの手で埋めることができ、世の中の管理業務は今よりもっと早く、楽に、正確に処理できるようになると思います。
―後輩の若手会計士にむけたキャリアについてのアドバイスはありますか?
『自信を持ってほしい!』ですね。
会計士は『想像力』を活かして様々な仕事にキャッチアップできる強みがあると思います。今の自分に自信を持てない人こそ、1年後の自分に自信を持てるようにチャレンジして欲しいなと思います。自信を持てるようになれば、その先の選択肢は更に広がると思います。
『想像力』を発揮するためにも、一度は監査法人の外に出てみたほうがいいと実感しています。私自身も監査法人を出るまでは、これほど様々な仕事にスムーズに入ることができるとは思っていませんでした。監査法人を出て、ベンチャー企業のCFOという立場で一年と少しやってみての実感です。
大丈夫です。会計士としての能力があれば、ちょっとやそっとじゃ死にはしません(笑)。もちろん、それに甘んじてはいけませんが。監査法人でのプロフェッショナル・パートナーとしてとしての業務の方が合っているな、と感じたら戻ればいいですし、外での経験は必ず活かされると確信しています。
それと、私は『ご縁』も大切だと思います。
何か『挑戦してみたい!』と思った時、それを実現させるために協力してくれる人、応援してくれる人、必要としてくれる人との繋がりはとても大事です。目の前にある機会に積極的に手を挙げ、チャレンジすることで人との繋がりは自然と増えていきます。前職時代もそうですが、転職してからは特にこれまで培ってきた繋がりやコミュニティに助けられてばかりですね。
Profile
田中將寛(たなかまさひろ)
1988年生まれ・山口県出身・公認会計士
大阪大学在学中に公認会計士二次試験合格
2011年より有限責任監査法人トーマツに入所
トータルサービス部において、
ベンチャー企業のIPO支援、監査を経て
2018年より株式会社かんざしの取締役CFOに就任