「会計」を知った感動を多くの人に届けたい
freee株式会社 梅田裕介氏
銀行員を経験されてから会計士となり、有限責任監査法人トーマツ(以下トーマツ)を経てfreee株式会社に転職された公認会計士 梅田裕介氏にお話を伺いました。
大手銀行で働きながらも、なぜ会計士の道を目指すことにしたのか。そして、「会計を世の中に広めたい」というキャリアの軸となる想いにはどのようなきっかけで気付き、そして実現しようとしているのか。ご経験を踏まえ率直なお話を伺いました。
「やりたいこと」の見つけ方
―まず最初に、会計士を目指した背景を教えていただけますか?
私が会計士を目指したきっかけは新卒で入社した銀行での新人研修がきっかけでした。
財務分析を行う研修だったんですが、周りよりもスムーズに分析を進められたし、実務でも結構楽しくて、『これは自分の得意分野かもしれないな』と思いました。
経済学部出身で、数学は元々得意な方でしたが、ビジネスの世界で数字からこんなに多くのことを読み取ることができ、色んな場面で活かせるのかという新鮮な学びがありました。
本格的に目指したのは、銀行を退職して会計士になった大学の友人の話を聞いてからです。会計士という仕事の自由度の高さ、学べる知識の広さや深さについて知り、会計士になろうと決めたのを覚えています。
その後すぐに会社を辞めて勉強し始め、試験になんとか受かって会計士になったのが2007年のことです。
―入社先にトーマツを選んだのはなぜでしょうか?
一番の理由は、トーマツにトータルサービス事業部(以下TS)があったのが大きな理由です。銀行員時代からトップの顔が見えない大企業よりも、中小企業のトップや経営幹部と顔を突き合わせながら融資を通じて会社をサポートしていく仕事がしたいなと思っていました。会計士になっても、これから伸びていくような会社を様々な面から支えていきたくて、トーマツに入社を決めました。
―トーマツでのお仕事で、特に印象に残っている仕事はありますか?
トーマツに入社して4年目にFAS部門に出向して、M&A関連業務に携わりました。
その仕事はとある大手企業の子会社の売却案件で、親会社の都合で会社を売却するという案件でした。
ファンドとの交渉も行うなどかなり深くクライアントの中に入りながら非常に緊張感とやりがいのある仕事でした。
今思い返しても、とても貴重な経験をさせてもらえたと思いますし、これらの仕事を通して私のやりたい方向性を改めて考える機会となりました。
―というのは具体的にはどのようなお考えになったのでしょうか?
会計士やM&Aアドバイザリーとして専門的な会計知識をソリューションとして提供していくプロフェショナルとしての働き方より、私が真にやりたいことは、会計の知識を会計の専門家ではない方々に伝えていく仕事がしたいのだと初心に立ち返る機会となりました。
数学が少し得意だけど、将来何の役にも立たないなと思っていた私が、財務分析や会計の研修を通して、数字を扱う会計がビジネスの世界でどれだけ役立つものかに感動し、専門家以外の人も絶対に知っておいた方がいい、私がその役割を担いたいと強く考えるようになりました。
もともとその想いは強く、トーマツのFAS部門出向前に、『子ども達に教えたい会計のしくみ』という本も出版していました。
読んだ人が、自分の子供に会計の仕組みについて教えられるような内容の本です。
自分の今後を考えるうえでも重要な分岐点だったと思います。
freeeとの出会い
―監査法人から転職する際、どのような条件で企業を探されていたのでしょうか?
自分のやりたいことはぼんやりとありましたが、それが仕事で実現できる環境ってどんなところなのかあまり明確にしないまま、「事業会社で働きたい」という条件で企業をさがしました。
しかしながら、私の経歴で活動をしてみると、事業会社の経理や会計コンサルの仕事等で、私がやりたいこととは程遠く、戸惑いを感じました。
―どのようにしてfreee社と出会い、入社を決意されたのでしょうか?
とあるエージェントの方からfreeeを勧められたことがきっかけです。
そして、当時独立開業されていたトーマツ時代の尊敬する先輩がSNSでfreeeを紹介しているのも見て強い興味を持ちました。
思い返してみると、入社を決めた理由は3つあったと思います。
まず、会計ソフトの会社であれば、どのようなポジションでも私のコアスキルを活かせるなと感じたこと。
次にfreeeが「人を見る会社、人を大事にする会社」だと感じたこと。
そして、スモールビジネスに着目している会社の想いに対して、会計をもっと世の中に浸透させていくという私の想いがバチっとはまった感じがしたことです。
特に、2つ目の「誰と働くか」も重要な要素であったのだと思います。
他の会社では、バックボーンが会計士だと他社の面接では会計スキルや知識・経験ベースの質問が多かったのですが、freeeの面接では良い意味で色眼鏡なしで本質的なものを見られている感じがして、人を見る会社、人を大事にする会社なんじゃないかと感じました。
―freeeでは実際どのようなお仕事をされてきたのでしょうか?
freee入社直後はサポートチームで顧客サポート、その後アドバイザーチーム(現パートナーセールス)に異動し、会計事務所様にむけてfreeeの案内をしていました。
それから、お客様への提案に同行したり、導入を決めたお客様に使い方のレクチャーをする導入支援に携わり、メンバー教育、チームマネジメントにも携わりました。
今年に入ってからは、会計事務所向けの新規サービス立ち上げに関わったり、freeeを認知・理解してもらうための動画コンテンツ、営業ツールの作成等の企画業務にも携わっています。
いずれも、freeeを通して会計を広く認知してもらう仕事なので、私がやりたかったことをそのまま仕事にさせてもらっていると思います。
また、社内教育も担当しており、社内にも会計についての知識を広められています。
社内のメンバーがもっと会計に詳しくなれば、さらにその先のお客様にも知見が広がっていきますから、やりがいのある仕事だと感じています。
―今後はどんな仕事をしていきたいと思っていらっしゃいますか?
大きな軸は変わりませんが2つあります。
freeeを通じて会計を知ってもらう取り組みとして、パートナーシップの構築に取り組みたいのと、優秀な会計アドバイザーとfreeeに精通したエンドユーザーの最強のタッグをもっと生み出すことです。
後者は特に、どちらか一方だけではなくて、両方揃うことが最もビジネスを成功させることができると思います。
会計をもっと多くの人に広めていきたいという想いは変わらないので、それを実現するための仕事をしていきたいですね。
今もボランティアで、学校の課外授業として会計の授業を行ったり、そこに協力してくれた大学で特別講義をしたりしています。
今後も会計を世の中に広めていき、私のあの時のあの感動を同じように感じてもらえたら幸せだなと思います。
若手会計士の方へのメッセージ
―お話少し変わるのですが、現職のような事業会社でも活かせるなと感じる監査法人でのご経験はありますか?
内部統制監査の経験はビジネス全般で通用する基礎となる経験だと思います。
特に営業するうえで、お客様の会社の業務、ビジネスを理解する根幹のスキルになっていると思います。
色々なアプローチの仕方はあると思いますが、私はお客様にfreeeを提案するときはまずはお客様の主要な業務フローを確認して、どのようにしてビジネスをしているのかを把握してから、有効な活用方法を提案していますので、監査法人の経験が活かされていると感じます。
―最後に、若手会計士へメッセージをお願いします。
既に感じている会計士の方も多いと思いますが、危機感を持つということも大事なんじゃないかと思います。
会計士であっても、会計スキルがあるだけでは将来安泰とは言えない時代がやってきます。もしかしたら、既にそうなりつつあるのかもしれません。
会計に+α何かを掛け合わせることで、オリジナリティーのある存在になれると思います。
私は、freeeでクラウド会計に出会いました。
会計とクラウドの思想を持ちながらそれぞれの最先端の情報を吸収し掛け合わせることができる可能性にワクワクしています。
Profile
梅田裕介(うめだゆうすけ)
一橋大学 経済学部 卒業
三菱UFJ銀行
有限責任監査法人トーマツ
freee株式会社(現在)